第1回犀川水系河川整備検討委員会の様子と感想

(委員会の様子)
 
 挨拶、趣旨説明等の後、県担当者から、河川法改正、改正による新たな考え、その考えに基づく「河川整備基本方針」の策定、その方針に決めるべき内容、そして犀川の現状等についての説明が行われた。その後で、各委員はこの委員会で議論するにあたっての感想を述べた。
 
注:平成9年の新河川法改正で河川環境に配慮する事項が加わった。従来、「工事実施基本計画」で工事の基本となるべき事項を決めておくこととしていたが、「河川整備基本方針」と「河川整備計画」の2段階に分割された。「河川整備基本方針」の策定(新河川法第十六条)にあたっては県河川審議会の意見を聴かなければならないが、石川県では河川審議会が設置されていない。犀川水系についての基本方針を策定するに際して、河川審議会の代替機関ともいえる、当委員会を設置したものである。

注2:「河川整備基本方針」では、当該水系に係る河川の総合的な保全と利用に関する基本方針、河川の整備の基本となるべき事項(基本高水、計画高水、正常流量等)を決めなければならない。「基本高水」はダム等で調節する前の水量、「計画高水」は調節後の流量、「正常流量」は常時、必要と考えられる流水量のことである。


 各委員の感想と意見、県土木部長のあいさつと説明から、印象に残った発言を整理すると、以下のようである。
 ● 原則公開であり、当然と言えば当然であるが、つい最近まで非公開が多かったような気がする。いまから思えば、何を隠す必要があったのかとも思う。委員が自由に発言できなくなるとかいう理由を聞いた記憶があるが、公開でもほとんど発言がないから、ほとんど発言しないということを隠すために、委員の立場をおもんばかって非公開にしていたのではとも勘ぐりたくもなる(^_^;)

 ● 「忌憚の無い意見を述べて議論をつくしたい」、「後世において評価される委員会にしたい」とかいう、意欲的な意見もあった。(^_^) この発言を忘れないで欲しいものだ。

 ● また、県からは、県民の意見を聞き、事業計画については明確に説明するという趣旨の発言もあった。よい心掛けである。意見も言うし、質問には明確に答えてもらいたいものだ。

 問題は、つぎの2点である。
 ● 治水、つまり洪水について「昔、大変な洪水が何回もあった。あんな被害は二度とごめんだ。あんなことが無いようにしてほしい。」という趣旨の発言がいくつもあった。県の説明でも過去の洪水被害が写真で紹介されていた。部長もあいさつで、異常気象だ、今年はヨーロッパで大洪水だ、去年は東海豪雨で大被害があったと強調した。なんか、変である。犀川の治水の安全度を上げないといけない。そのためにはダムを造らないと、というストーリー? 当時の治水の安全度と現在の治水の安全度を正確に認識して判断できるのか、心配である。

 ● 利水については、渇水で犀川の河原が干上がった写真をみせて水開発の必要性があるという認識を誘導しているように見えた。もともと、犀川は夏場、すべてかんがい用水に利用し、枯れる川である。日本の多くの川はかんがいに全量、使い尽くしている川が多い。それでも水が回復すれば生態系も回復するという繰り返しである。知ってか知らずか、委員は「川が枯れるとところどころ溜まり水となり、魚がすめない。枯れないようにしてほしい。」とか「かんがいの面積が減ったけれど、用水は他の目的でも利用されている、絶対に減らして欲しくない。」という話をする。これではダムで水を開発しないという話につながりそうである。犀川を流れる水がどれだけあり、現在どのように利用しており、余っているのか、不足しているのか、不足しているとすればどこまで開発してもよいのか、を考える必要がある。犀川が干上がることがあるから、水を開発しないといけないと単純に理解されると困る。説明する県も頼りがいがあるとはいえない。かなり、つきあってきたが、やみくもの開発は得意だが、現状の把握が頼りない。明確な水利用の実態の説明を聞いたことがない。
 犀川ダムができてから、渇水による影響はかなり改善している。平成六年の日照りでは、「北陸中日新聞平成6年8月4日 −県内の水不足金沢でも−」によると、「、、、、泉用水土地改良区の伴田泰男理事長は「犀川ダムができて以来、番水を行うのはすくなくなったので久しぶりのこと」と話し、、、、、、」と紹介されている。その理由の一つは、犀川ダムで開発された工業用水4万トン/日、犀川/内川ダムで開発された上水道用水を20.5万トン/日のうちの11万トン/日が利用されずに垂れ流されている。このような事情を県の河川課から聞いたことがない。しかも、犀川ダム/内川ダムの水量の監理をしているのは、金沢市企業局電気課である(発電のため。)。県管理河川である犀川の水管理について実態の把握をしていない。
 工業用水、上水道用水は金沢市のものである。金沢市はこれを余裕であり、将来利用すると主張している。したがって、現状よりも改善しようとすると、少なくとも15万トン/日を開発しなければならないことになる。その上に、辰巳ダムで開発しようとしている、6万トン/日、これは夏場の渇水時、犀川大橋の下流の堰を越えて流れるようにするために供給する水量であると主張している。これを加え、21万トン/日の水量を開発しないと理屈は合わない。辰巳ダムの6万トン/日の3.5倍である。単純にダム貯水量を3.5倍すると840万トン(=240万トン×3.5)となる。現在の計画の辰巳ダムをすべて正常流量用にする必要があることになる。
                                                                                                平成14年11月15日
                                                                                                     中 登史紀

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