辰巳ダム日誌(2003年1月)

【「犀川の基本高水に関する意見書」を犀川水系河川整備検討委員会へ提出:1月22日】

 犀川水系河川整備検討委員会事務局へ上記の意見書を提出した。これは、第2回の犀川水系河川整備検討委員会(平成14年11月29日開催)で石川県担当者の「基本高水」に関する説明に問題点が多々あったため、これを指摘するためである。問題点とは、「基本高水」に関する誤解、「台風型」降雨パターンの抜け落ち、過去の出水に関する情報不足などである。

 提出した意見書と添付資料は、
 「犀川の基本高水に関する意見書」
 および犀川大橋地点の各生起年月日降雨パターンの解析流量を降順で並べた一覧表
 添付資料(石川県河川課長あて「犀川の治水に関する申入れ書」および添付資料、平成14年7月26日)、
 参考資料(『転換期の私的・土木技術論考』、『「犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見」についての意見と反論および問題提起』、『「砂漠のキャデラック」を読む』、『金沢の治水を考えるキーワード』)を提出することにした。

 加えて、追記「前線型と台風型の降雨について」
 を作成し、意見書につけた。県の解析では、肝腎の「台風型」降雨を見落としている。「前線型」と「台風型」がどのように違うのか、降雨データを図化して、説明を加えた。
  「金沢地方気象台」と「医王山観測所」地点の降雨量
   (図1)48時間降雨量(平成7年8月30-1日):前線を伴った低気圧
   (図2)48時間降雨量(平成8年6月24-26日):梅雨前線
   (図3)48時間降雨量(平成10年9月21-23日):台風7号
   (図4)48時間降雨量(昭和36年9月15-16日):第二室戸台風
「金沢地方気象台」と「犀川ダム」地点の降雨量
   (図3-2)48時間降雨量(平成10年9月21-23日):台風7号
「金沢地方気象台」と「倉谷観測所(犀川上流)」地点の降雨量
   (図4-2)48時間降雨量(昭和36年9月15-16日):第二室戸台風

 なお、「基本高水に関する意見書」のおおよその内容は以下のとおり。
 (犀川大橋地点の流量) 第2回の委員会で、県担当者は1番目のH.7.8.30降雨パターンの1,741m3/秒を「基本高水」とし、この流量に対する治水対策を説明していました。しかし、この流量は1/100の「基本高水」ではありません。
(1/100の「基本高水」) 938m3/秒が1/100の「基本高水」であるものと推定できます。
それでは、実際の出水量はどれほどなのでしょうか?
(過去100年間の最大出水量は842m3/秒!) 20世紀の百年間に発生した大洪水の犀川大橋地点における推定出水量は
 ● 大正11年8月3日 犀川大橋陥没破壊 772m3/秒
 ● 昭和36年9月16日 第二室戸台風 727±87m3/秒
 ● 平成10年9月22日 台風7号 842m3/秒
 「1/100の確率の降雨は100年間の間に1回よりちょっと多く起きる」
 最大出水量842m3/秒と解析で求めた数値938m3/秒とはほぼ符合。
(県の解析が妥当であると仮定した場合の基本高水の確定) カバー率60%とすれば、1,043m3/秒となります。一つの妥当な数値。

 ただし、県の解析には2つの問題点があります。
(県の解析の問題点1:「台風型」降雨パターンの抜け落ち) 
 県は24降雨パターンを選定していますが、重大な見損じがあります。過去100年間の最大出水および次に大きいと推定される、「平成10年9月の台風7号」と「昭和36年9月の第二室戸台風」の降雨パターンが抜け落ちているという点です。
(問題点2:犀川のピーク流量をもたらす降雨は「前線型」よりも「台風型」)
 犀川本川のピーク流量は「前線型」よりも「台風型」から求めるべきです。県の解析では、「前線型」を引き伸ばした計画降雨からピーク流量を求めています。この考えは必ずしも地域特性を反映したものと言えません。
(治水対策検討に関する提案:「前線型」と「台風型」に分割)
 「前線型」と「台風型」では、降雨も出水形態も異なります。したがって、その治水対策は分けて考える必要があります。

 

【「河川計画専門部会」事務局へ「申し入れ書」を提出:1月22日】

 第2回の犀川水系河川整備検討委員会(平成14年11月29日開催)で基本高水などの治水に関する課題を別途,専門家で討議するための部会の設置が決められた. 委員も決まり,今週の25日(土)午後1時半より、地場産業振興センターで第1回委員会の行なわれる. 「犀川の基本高水」に関して意見書を犀川水系河川整備検討委員会に提出したことを部会に案内するために,申し入れ書を部会事務局へ提出した.

【「河川計画専門部会」が開催の予定:1月25日(土)】

 第1回委員会(公開)は、25日(土)午後1時半より、地場産業振興センターで行なわれる.

 

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