かんがい用水水利の公開質問状の返答あり
――辰巳ダム計画にともなう「かんがい用水の転用」のその後――

 辰巳ダムの建設は、治水のみならず、利水についても必要不可欠なものと評価されている。渇水を防いで流水の正常な機能の維持するために、ダムは必要とされたが、その貢献度から見ると、ダムによる貯留よりもはるかに、「かんがい用水の転用」の方が大きい内容になっている。農地の減少によって余剰が生じたかんがい用水の転用が有効ということである。したがって、転用が計画通りに進捗しているかどうかが鍵である。平成24年6月に辰巳ダムの運用が開始された。「かんがい用水の転用」は順調に進んでいるのだろうか。

 これを確認するために、10月24日に知事宛に「辰巳ダム計画に伴う犀川七ケ用水の水利権量の見直しについての公開質問状」を出したが、その返答が11月17日にあった。

 関連の情報公開の際に、河川課担当者から、口頭でなされたものである。文書による回答を求めていたが、口頭による返答であった。文書と口頭の使い分けについてどのような判断で決めているかについては、明確に返答しなかった。

 返答は、長坂用水については、平成23年4月1日から水利使用が変更されて辰巳ダム計画で見直しされた水量となった。他の用水はまだ変更されていないということであった。その理由を尋ねると、ほかに中村高畠用水が許可水利であるが、その他は慣行水利であるので、許可申請が出されないので変更のしようがないということであった。長坂用水のほかのもう一つの許可水利の中村高畠用水は、平成26年3月31日の許可文書においても従来通りの水利権量のままとなっている。この用水を含め、県から各用水組合へ水利変更の働きかけはしているという話であったが、手も足もでないという実態だと推察された。

 長坂用水にしても、許可申請書(変更)(平成23年3月1日)を見ると、取水量の欄に期別最大取水量と注水量とがあり、注水量は確かに変更後の水利量であるが、期別最大取水量の数値は変更前の水利量と同じである。結局、従来通りに使用してもよいことになっているのでこれで変更されたのかどうか、明瞭ではない。

 長坂用水と中村高畠用水以外は、慣行水利である。辰巳用水も許可水利としていたが、平成24年9月28日の「辰巳用水土地改良区の水利使用に係る取り扱いについて」文書で慣行水利であるということになった。慣行水利ということになると、河川管理者である石川県に対して、水利使用の許可申請を出す義務はないので、河川管理者は水利使用の変更を命じることができない。ということは、未来永劫、かんがい用水の転用はされず、辰巳ダム計画で議論してまとめられた利水計画はもともと、何の根拠もなく、辰巳ダムを正当化するための、単なる「まぼろし」であったようだ。
 2014.12.18

 長坂用水 H22水利許可継続
 長坂用水 H23水利許可更新
 用水位置図
 辰巳用水 H22水利許可継続
 辰巳用水 H24辰巳用水の水利権に係る経緯書
 辰巳用水 H24辰巳用水土地改良区の水利使用に係る取り扱いについて

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