辰巳ダムの地すべり対策(その2) |
北河内ダム(総貯水容量286万立方メートル)に比べて大きい辰巳ダム(総貯水容量600万立方メートル)では地すべり対策の必要性が低いわけではないが、対策費用が少額であることを紹介した。北河内ダムでは約5億円に対して、辰巳ダムでは3千万円ほどである。けれどもこの他に全く対策がなされていないというわけではない。直接的ではないが間接的に有効に働く斜面安定対策工が実施されている。斜面の崩壊を防止するための工事であるが、これは地すべり土塊の末端の斜面が崩壊して土塊全体の安定が悪くなることを防ぐ意義がある。総額で4億6千万円ほどが費やされている。 鴛原超大規模地すべり地の末端で1カ所、その対岸の瀬領地区で1カ所、上流の駒帰で1カ所の3カ所、それぞれの施工面積は鴛原7千平方メートル、瀬領2千平方メートル、駒帰千平方メートル、合計1万平方メートルほどである(表1)。現場吹き付けのり枠工といわれる工法でところどころに鉄筋を挿入して斜面に固定している。瀬領は平成21年10月から22年3月にかけて、鴛原、駒帰は平成22年9月から23年4月に施工された。 今月4日に現場を歩いて様子を確認したので、その時に写真をいくつか紹介する。その1は鴛原超大規模地すべり地の末端の法枠工(のりわくこう)、その2は瀬領地区斜面の法枠工、その3は鴛原超大規模地すべり地の末端の鉄塔の下あたりの法枠工、その4は鴛原10工区と9工区の境界である。 工区の境界はあまりにも明らさまかなと思う。工区の境界は赤ペンキで区別してあるのでわかるが、なければ施工の境が全くわからない。工区別に別々の業者が受注し、別々に施工したことになっているが、法枠工の専門業者が別にいて工区をまとめて施工したのだろうということを推測させる。 事情通によれば、直接、専門業者に一括して発注すれば半分くらいの費用でできるだろうという見立てである。3カ所の工事が18工区にも分割して発注されているのである。かなりの浪費であるが、一慨に無駄とはいえないところが公共事業である。政治判断による一時的な地域経済効果とでも言えるものである。水道工事、下水道工事、道路工事などでも分割して多数の中小業者に配分することは普通に行われている。 鴛原、瀬領、駒帰3カ所の工事は、それぞれ10工区、6工区、2工区に分割して発注されている(表1)。最初に実施された瀬領地区は、6工区に区分されたのは、複数の中堅業者に配分するために金額を3千万円以下に抑えたためだろう。6業者がそれぞれ3千万弱で受注している。そのつぎの年に実施された鴛原については3千万円以下にすると10工区にもなっている。それでは、10業者が受注したかというとそうではなく、最初に瀬領地区とほぼ同じ業者が2工区を重複して受注している(表2)。広く門戸を開けているように見えて恣意的に排除しているようで、政治家に加えて行政の関与も疑わせる。 一時的な地域経済効果については、一理があることは誰しも認めることであろう。しかし、少なくとも2つの問題点を指摘できる。割高となった工事費を負担するべき国民に余裕がなくなり、重荷になっていることである。もう一つは、余剰ともいえるお金をめぐる不明朗さである。仮に、工事費4億6千万の半分が地元への地域経済効果に相当するとして、2億なにがしかのお金が地元業者に入って潤ったということにしよう。これに関与している政治家や行政マンが黙って指をくわえてみているだろうか。 2011Dec11,naka 【添付ファイル】 表1 地区別の斜面安定対策工(現場吹き付け法枠工)→エクセルファイル、pdfファイル 表2 業者別の斜面安定対策工(現場吹き付け法枠工)→エクセルファイル、pdfファイル 写真1 鴛原超大規模地すべり地の末端の法枠工(のりわくこう)→jpegファイル 写真2 瀬領地区斜面の法枠工→jpegファイル 写真3 鴛原超大規模地すべり地の末端の鉄塔の下あたりの法枠工→jpegファイル 写真4 鴛原10工区と9工区の境界→jpegファイル 本文 →ワードファイル
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