高畠地区の浸水災害とは、

(高畠は)

 犀川本川と伏見川が合流する地点であり、両川にはさまれた三角形状を有する低地である。両川の水位が上昇すると排水ができなくなり、周辺から集まってきた雨水が滞留する。従来は田畑であり、人が住まなかったところである。堤防ができて洪水がなくなったとの勘違いから、住宅などがはりついた。

(2度の浸水騒ぎ)

 平成8年6月、平成10年9月と2回、大きな浸水被害が起きた。前者は、梅雨前線によるもので長雨が続き、最大24時間雨量は199mmに達し、観測史上第2位を記録した。犀川の水位上昇が長時間続き、内水の排水ができず、浸水したものである。床上45棟、床下87棟の被害がでた。後者は、第二室戸台風以来の大型台風7号によるものである。床上24戸、床下24戸の被害がでた。

(市は)

 平成8年の時は、「抜本的な対策は、県が進めている犀川下流部の拡幅や辰巳ダムの建設を待つしかない。」、「中長期的な対策を検討したが今のところ具体策は見いだせない。」としていたが、さすがに、平成10年の時には言い訳が通用しなかった。早速、下水道事業(雨水排水整備)を繰り上げて、平成13年度までにポンプ場の整備をいそぐことにした。

(今一度、確認してみよう)

 市は高畠地区の水害の根本的な解決は辰巳ダムであると述べているが本当か?
高畠地区で実際に浸水被害を発生した2ケース、平成8年6月25日梅雨前線による豪雨、平成10年9月22日台風7号による豪雨について検証してみる。

 各地点の実際の流量は以下のとおりである。
 平成8年6月25日
  犀川ダム地点  最大流入量1943/s→最大放流量95m3/s
  辰巳ダム計画地点  107m3/s
  浅野川導水路からの最大流量  28m3/s
  犀川大橋地点(下菊橋測水所) 242m3/s
 平成10年9月22日
  犀川ダム地点  最大流入量5333/s→最大放流量96m3/s
  辰巳ダム計画地点  124m3/s
  浅野川導水路からの最大流量  125m3/s
  犀川大橋地点(下菊橋測水所) 352m3/s

 仮に辰巳ダム地点の流量を全量、辰巳ダムに貯め込んだとする。犀川大橋地点の流量は、それぞれ、
  242−107=135m3/s
  352−124=228m3/s に低減される。
 前者のケースでは、川の水量が半分程度になるので効果がある。
 後者のケースでは、辰巳ダムで全量貯め込んだとしても、平成8年6月25日の流量242m3/sにほぼ同じであり、同様に浸水被害が発生するだろう。

(原因と対策)

 これは、原因と対策が異なるためである。辰巳ダムは、高畠地区の浸水対策として効果のある場合もない場合もある。「高畠地区の浸水被害を解消するために辰巳ダムが決め手である」のは誤解である。
 高畠地区のような、低地の内水(住宅地側の雨水)による浸水対策は、土地の嵩上げか、ポンプによる排水しかない。ダムは河川の外水をコントロールする施設であり、内水をコントロールできないためである。
 石川県は、内水対策と外水対策の相違を理解していながら、辰巳ダム建設の立場から、はっきり、説明しようとしない。逆に、辰巳ダムの調節機能によって、河川の水位を下げることができ、高畠地区の浸水被害に有効であるかのような説明をしている。市もその片棒を担いでいる。

「金沢の洪水」へもどる

「金沢の水問題を考えるコーナー」へもどる

「トップページ」へもどる