金沢洪水える 23
by Toshiki NAKA



河川改修事業がますます水害リスクを増大させる?
−−治水事業と整合性のない都市計画−−

《犀川下流域の資産が増大し水害リスクが大きくなっているのでますます河川改修事業が必要であり、辰巳ダムを造らないと流域住民の生命と財産を守ることができないと県は説明する。水害リスクを減少させるための河川改修事業が逆に水害リスクの増大させているのではないか。その主たる原因は、治水事業と整合性のない都市計画のためではないか?》
水害リスクの増大にともない河川改修事業の必要性が増大
 県は、河川の流域での資産が年々増加し、水害に対するリスクは増大しており、そのため、ますます、河川の改良費が必要なると説明する。県は、100年に一回の洪水氾濫によって、犀川流域で4434億円の被害が発生すると見込んでいる(県作成、費用対効果資料)。

河川改修事業が水害リスクを増大させる?
 石川県は、県全体で毎年河川改良等に200億円程度の費用を支出している。戦後から累積の投資量は現在価値で1兆円にもなると予想される。にもかかわらず、ますます、水害に対するリスクが増大しているということは、治水安全度をあげ、水害のリスクが小さくするための河川改良事業の意図するところとは逆の方向へ進んでいることになる。

その原因は
 この大きな原因は、河川の近くの水害リスクの高いところに、無制限に都市が開発されることが大きな原因である。河川整備と都市整備が整合性無く、無秩序に進んでいることを意味する。河川の整備が進むと、見かけの水害リスクが減り、水害リスクの大きな地域に開発が進む、総体として、水害リスクが減少しない、あるいは逆に大きくなる、という不都合な事態が発生している。

悪循環を断つ
 このような悪循環を防ぐため、低地の開発を抑制することによって、川に過大な負担をかけないようにするべきである。今までのように、川の下流の全域を、どんな洪水に対しても安全にするという街づくりは膨大な費用がかかる上、さらなる悪循環を生む。ある規模以上の洪水は氾濫させることを前提に都市づくりを考えるべきである。

低地の都市開発を抑制できないのか
 水害のリスクの高いところは都市開発を抑制するしくみはないのだろうか、石川県の都市計画担当者に話を聞いた。抑制するしくみがあることがわかった。都市計画法施行令第8条で、区域区分に関し必要な技術的基準が定められており、第2項ロで「温水、湛水、津波、高潮等による災害の発生のおそれのある土地の区域」は、原則として市街化区域に含まないと決められている。だから、抑制することはできるのである。

しくみはあるが情報不足
 問題は、都市計画図にその情報が盛り込まれていないことが問題であることがわかった。都市計画担当部署では、街路、下水道、都市公園、港湾、河川などの担当部署からあがってきた、各計画の調整のテーブルを用意することが主たる業務とのことである。都市計画部署が主導して各計画を作り上げるわけではないとのことである。したがって、水害の恐れのある区域を河川担当部署が明記しなければ都市計画に反映されない。これまで、河川担当部署は水害の恐れのある区域を指示していなかった。今までの河川事業はすべての洪水を川の中に押し込め、堤内側(居住地側)に漏らさない、湛水させないという考えだった。そのために、実質、有名無実の規定となっていた。

浸水想定区域図の作成
 平成13年の水防法の改正で、県に浸水想定区域図の作成が求められるようになって、その効果の発現が期待される。犀川においては、「河川整備基本方針」に基づいて近々に策定されるはずである。

浸水想定区域図をもとに区域を除外
 この情報をもとに、都市計画法施行令第8条区域区分に関する技術的基準により「おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域として市街化区域に定める土地の区域は、原則として、湛水のおそれのある土地の区域を含まない。」として除外できることになる。

個人の権利を無制限に許容できない
 低湿地が一等地に化けた例は多いので土地所有者の抵抗が予想され、実務的には簡単にはいかないだろうが、個人の権利を無制限に許容すれば、膨大な費用を消費する街づくりとなり、社会全体の利益に反することになる。

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