金沢洪水考えるNo.15           

●飽和雨量というやっかいもの
 ――貯留関数法の欠陥――

 石川県では,平成14年10月以来、約半年にわたり、犀川水系河川整備基本方針をまとめるため、犀川水系河川整備検討委員会で議論が続けられてきた。筆者も傍聴者の一人として参加し、文書によって、委員会開催の都度、申入書、意見書、公開質問書などの形で考えを提起してきた。筆者の問題提起について若干の答えらしき報告はあるが、疑問についての議論がほとんどないままに委員会が進められ、6月10日には、早くも基本方針をまとめるための委員会開催となった。
 「犀川水系河川整備検討委員会設置趣意」には、「委員会での議論を通じ、県民への十分な説明と理解を求めていきたい。」とある。治水に関して、筆者が提起した問題点について、わずかなコメントがあるだけである。十分な説明とは、ほど遠く、石川県の提示する案を全く理解できない状況である。
 委員会および部会を構成する委員は、日本の河川行政をリードすべき、河川工学の学識者であるがほとんど有意な答えがない。県をおもんばかって説明できないのであれば、委員を辞退するべきであろう。実学としては機能不全状態である。
 しかし、議論を通じて、治水に関して、問題が3点に集約できることがわかってきた.どうもこれは、日本全体の治水計画,ダムの根拠なるものの問題点のような気がする.
 その三点とは,
 ●飽和雨量というやっかいもの――貯留関数法の欠陥――
 ●計画洪水量と実際の洪水量とのへだたり――実際の自然現象を捉えていない幼稚で乱暴な解析手法――
 ●計画洪水量の決め方に誤り――簡単な推計法の重大な誤謬――
 まずは、飽和雨量についてである.
(●飽和雨量というやっかいもの――貯留関数法の欠陥――)
 基本高水流量を計算するために採用している「貯留関数法」ではいくつかの係数を用いているが、その中で最も重要な数値は、飽和雨量Rsaである。流域の地表面の湿潤状態を表す係数で、これを変化させることによって洪水現象をほぼ説明できるといわれている。他の種々の係数は基準書等から選択した、一般的な数値を採用しても検討結果に影響が少ない。飽和雨量に根拠のある数値を選択すれば、計算結果である「基本高水流量」は信頼に足るものであるというわけである。

 ところが、この飽和雨量の1/100確率値がわからない。大量のデータから、1/100確率値を求めたとしても、1/100の降雨量のケースに、1/100の飽和雨量を適用して求めたものが統計的に1/100ではない、1/100*1/100になるのではないか、という問題も発生する。
 要するに、飽和雨量という要素によって実際の降雨を説明できたとしても、将来の洪水現象を説明するには問題があるということである。問題があるというよりも、要素を創ったことによって、解析をより以上にやっかいなものにしたのではないのだろうか。

 飽和雨量の違いによって流量がどれくらい違うのであろうか。県資料(第2回河川専門部会)によれば、H7.8.30型のケースで、飽和雨量Rsaが30,100,190mmに対して、それぞれ2043,1741,1193m3/sである。飽和雨量によって流量は全く違ってくる。このような重要な要素を県はどのように決定しているのだろうか。県資料(第1回河川専門部会)によれば、5個のデータの平均値(例、桜橋地点30,40,130,150,170→104≒100mm)で決めるという、考えられない杜撰さである。安全側でもない、危険側でもない中途半端な数値である。

 結局、信頼性のある数値を適用できないにもかかわらず、飽和雨量という概念を創ったために、信頼性のある流量を求められずに困っているのではないか。
 このような曖昧な解析でよいのかな?
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