金沢洪水考えるNo.12           

河道改修E案(犀川大橋上流の堤防嵩上げ案)

石川県の犀川河道改修案は500〜900億円だが、筆者の犀川河道改修案は1千万円!
(堤防嵩上げ案)
 石川県が作成した「犀川の治水対策案」では、最も簡単で容易な河道改修案が検討されていない。犀川大橋上流の「堤防嵩上げ案」である。

私は、もともと過大な流量をもとに石川県が提案した「治水対策案」など関心はなかった。けれども、詳細な検討資料が提示されたので確認してみた。その「検討案」を見ると、案の定、最も簡単で容易な案を提案していない。全国各地のダム論争で、常に議論される案で、最も簡単な案「堤防嵩上げ案」である。

(新規入手資料で堤防嵩上げ案の具体像が明らかになった!)
 「堤防嵩上げ案」は、ダムで調整しないで、そのピーク流量を堤防の嵩上げでまかなう案である。県行政情報公開請求で入手した資料「平成12年度 犀川総合開発事業(辰巳ダム建設)犀川水系河川整備計画作成業務委託参考整理資料[犀川現況河道の流下能力評価]2002-3、潟Aイ・エヌ・エー」(以後、「流下能力評価資料」と呼ぶ。)によって、河道改修第5案(県は4案を提示している)とも言ううべき「堤防嵩上げ案」の具体像が明らかになった。犀川大橋基準点の計画高水流量を1,230m3/秒ではなく、230m3/秒拡大して、1,460m3/秒とした場合、現況の河川でどれだけ水位が上昇し、堤防をどの区間、どれだけ嵩上げする必要があるか、おおよその数値を確認することが出来た。

(堤防嵩上げは、コンクリート擁壁の継ぎ足し)
 結論は、犀川大橋から下菊橋の区間(1200m)で、左岸590m、嵩上げ高さ2センチ〜101センチ、右岸500m、嵩上げ高さ6センチ〜133センチである。厚さ50〜60センチのコンクリート擁壁を造ればよい。すでに犀川沿いに造られているがあるが、その上に継ぎ足しをすればよい。

(県の計画では工費が500億円〜900億円!)
 県の計画では、河道改修案がA案からD案までの4案あり、最も安価な案でも犀川大橋上流の改修に500億円以上の費用がかかり、河道改修B案では約900億円の費用が必要としている。

(工費はわずか1千万円で足りる!)
 筆者が提案する河道改修「堤防嵩上げ案」では、工期1ヶ月,工費1千万円である。補償建物数0戸、下流の河道拡幅は他の案と同じとして全体の治水対策事業費80億円と著しく安価となり、C'/C=0.5(ダム案の半分)にしかならない。県は河道改修A案からD案まで提案しているが、筆者の提案を「河道改修E案」とする。これは、いー案(E案)!(^o^)である。環境に対しても全く、問題はない。

(川の水位の上昇は?)
 堤防嵩上げ案は、犀川大橋から上流の河川断面を現況のままとして、基準点流量(犀川大橋)1,460m3/秒を流下させる案である。水位はおおよそ、大橋地点で1.32(=0.97+0.35)m上昇し、水深は6.41mとなる(川底からの堤防高は左岸10.5m、右岸8.5m)、大橋地点直上流で1.53(=1.18+0.35)m上昇し、水深は7.74m(川底からの堤防高は左岸10.11m、右岸8.11m)となる。約1200m上流の下菊橋地点で0.35m上昇する。この数値は、「流下能力評価資料」をもとに概略計算して求めた。この水位上昇と堤防の高さの関係は、同資料の現況堤防高(左岸、右岸)と比較して検討した。

(水位の概略計算の考え方と条件)
 この「流下能力評価資料」では、犀川大橋前後の1600mは河川断面が変化し不等流となるため、背水計算によって河川水位を求めている。当検討でもその考えを準拠する。その前後は、1,230m3/秒で等流となるものとして計算されている。流量を1,460m3/秒とすれば、マニング計算により、35センチの水位が上乗せされる。始点、終点いずれも同じく、35センチである。流水断面積を流量に比例して大きくすれば(ここでは、単純に水深を1.19(=1460/1230)倍とした)、流速は同じくなり、速度水頭は同じとなる。背水計算における損失水頭も近似すると考えられるので、「流下能力評価資料」で計算された水位に、単純に上乗せ水位を加算して検討を進める。
 
 水位の概略計算の条件は、以下のとおりである。
 ・「流下能力評価資料」で不等流計算により確認する区間の始点(追加距離8300m地点)の水位を0.35m上乗せ(流量を1460m3/秒、マニング計算で求めた)、
 ・同じく、犀川大橋地点(追加距離8730m地点)の水位を1.32(=0.97+0.35)m上乗せ、0.97mは、背水計算の水深5.09mに0.19%(=(1460-1230)/1230)を乗じて計算、
・追加距離8300m地点と犀川大橋地点の間は、距離に比例按分して上乗せ高さを計算、
 ・同じく、犀川大橋直上地点(追加距離8750m地点)の水位を1.53(=1.18+0.35)m上乗せ、1.18mは、背水計算の水深6.21mに0.19%(=(1460-1230)/1230)を乗じて計算、
・同じく、下菊橋地点(追加距離9900m地点)の水位を0.35m上乗せ(流量を1460m3/秒、マニング計算で求めた)、
 ・追加距離8750m地点と下菊橋地点の間は、距離に比例按分して上乗せ高さを計算、
 ・かつ、1,460m3/秒を流下させた時に、不等流は「流下能力評価資料」で不等流計算により確認する区間1600mの中で収束するものと仮定した。

(計画高水量1,460m3/秒とした場合の堤防嵩上げ高さ/延長の検討一覧表)
 「流下能力評価資料」で不等流計算により確認する区間の1,460m3/秒としたときの水位、現況堤防高さ、不足する堤防高さ、堤防嵩上げ区間と延長の一覧は、(表)計画高水量1,460m3/秒とした場合の堤防嵩上げ高さ/延長の検討 のとおりである。

「金沢の洪水を考える」へ ◆金沢の水問題を考えるコーナーへ ◆トップページへ