北電鉄塔移設の概算工事金額を開示しないのは不当の異議申立は、
「これを棄却する」という決定書が届いた。

 異議申立をした相手である、資源エネルギー庁は、異議申立に対して理由がないということで本件の審査請求を棄却することにつき、「内閣府情報公開・個人情報保護審査会」に諮問していた。これに対して、本年10月30日付けで「内閣府情報公開・個人情報保護審査会」の「答申」があった。これを受けて、資源エネルギー庁長官が当方に平成26年12月10日付けの決定通知をしたものである。

 10月の末に「答申書」の写しが当方へ送付されてきて、白旗をあげた件である。今回、異議申立をした相手から最終の決定の文書が届いたわけである。

 「決定書」の内容は、「答申書」のとおりであるが、工事費概算額が公になると、「今後の入札手続きに支障を来すなど、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められるので、法5条2号イに該当し、不開示とすることが妥当である。」としている。

 ちなみに、「法」は「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(通称:情報公開法)」であり、「法5条2号イ」の「法5条2号」は法人に関する情報の規定で、「イ」は、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」である。

 合点がいったわけではない。
 地方公共団体が実施している事業の工事費については、事業が終わったあとは、すべて公開されていることに対して、法人が実施する工事費については、総額の工事概算額も一切、公表されないことについて、法の規定に差があるのだろうか。

 地方公共団体に関する「法」の規定は、「法5条6号ホ」であるが、「ホ 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」とあり、工事概算額の内容のすべてが公開されても、「正当な利益を害するおそれ」がないと判断されている。

 公企業と私企業との違いであろうか。
 個人に関しては、「法5条1号」に規定があり、ここでは、イ、ロ、ハと公開してもよいものが書いてあり、これ以外は公開してはいけないということになる。この場合、ここに書いてないから駄目とわかりやすいが、法人の規定の「法5条2号」の規定は、逆に公開してはいけないものが記載されており、その1つが「正当な利益を害するおそれがあるもの」ということで判断の幅がありすぎてわかりにくい。本件のように概算金額それも頭だけの金額でも「正当な利益を害するおそれ」などありそうもないと思われるが、ほとんど関係ないようなことを理由に(ここでは入札に支障がでる!)異議を棄却されてしまった。
国あるいは地方公共団体の規定は「法5条6号」にあり、上記の類似の規定は、「ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」とあり、「不当に害するおそれ」がある場合とかなり限定している。ということで、情報公開法の上では、公企業(公共団体)と私企業とでは扱いを変えているのでこのような結果になるのはやむを得ないのか、、、、、、。

【参考】行政機関の保有する情報の公開に関する法律(通称:情報公開法)
 (行政文書の開示義務)
第五条  行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。

一  個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
イ 法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報
ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報
ハ 当該個人が公務員等(国家公務員法 (昭和二十二年法律第百二十号)第二条第一項 に規定する国家公務員(独立行政法人通則法 (平成十一年法律第百三号)第二条第二項 に規定する特定独立行政法人の役員及び職員を除く。)、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律 (平成十三年法律第百四十号。以下「独立行政法人等情報公開法」という。)第二条第一項 に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)の役員及び職員、地方公務員法 (昭和二十五年法律第二百六十一号)第二条 に規定する地方公務員並びに地方独立行政法人(地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第二条第一項 に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員及び職員をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分

二  法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。
イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
ロ 行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの

三  公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報

四  公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報

五  国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの

六  国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
ホ 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

 「決定書」→クリック
2014.12.16 中 登史紀

 

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